コロナに負けるな!そしてありがとう! お医者さんのお話 おすすめ3冊(学年別)
はじめに~医療従事者に心の底からの「ありがとう」を~
とうとう、先日5月12日、新型コロナウイルスの新規感染者が東京15人、驚いたことに大阪ではなんと1人になりました。少しずつ、長くて暗いトンネルの出口の光が見えてきたようです。
もちろん、油断は禁物。これで自粛が緩んでパンデミックが起きてしまったら、これまでの私たち全員の努力が水の泡になってしまいますからね。
さて、新型コロナウイルスに対抗して、想像もつかないほど大変な仕事をしていただいているのが、お医者さん、看護師さんをはじめとする医療従事者の皆さんです。患者を救うために全力を尽くしてくださっている皆さんに、心の底から「ありがとうございます」という言葉を贈ります。本当に、本当に、ありがとうございます。感謝してもしきれません。
ということで、今回の特集は「お医者さんのお話」です。
たくさんの人から慕われてきたお医者さんは、たくさんの絵本や児童書に登場します。そんな物語のなかのお医者さんを通して、新型コロナウイルス最前線で戦ってくれている医療従事者の方々に、親子で思いを馳せてみましょう。
幼児~小学校低学年のお子さんへ
『よるのびょういん』
緊迫と安心のベストな調合
主人公の少年ゆたかは、朝からおなかの痛みを訴えていましたが、夜になって高熱を併発してしまいます。お母さんが急いで病院へ電話をかけ、ゆたかは救急車で病院へ。当直のお医者さんが急いで診察をしてくれ、虫垂炎と診断されたゆたかは、そのまま手術をすることに……。
児童書ではあまり見かけないタイプの写真絵本ですが、モノクロの写真で切り取られた一瞬一瞬は、病院で働く人の張り詰めた空気感と臨場感のある静寂を演出します。
しかし、それでいて、電話をかけるときのお母さんの表情、当直勤務のお医者さんの表情など、緊迫して張り詰めた空気の中にほどよく散りばめられた安心感が素敵な、子どもたちに刺さる写真絵本です。
私の中では、表紙の流し撮りされた救急車の印象が何よりも深く刻まれています。
小学校中学年のお子さんへ
『長い長いお医者さんの話』
現実と空想が織りなす創作童話集
表題作は、読んで字のごとく親切な町のお医者さんの話。
山に住む魔法使いがある日、梅の種をのどに詰まれせてしまいます。あわてた弟子は、急いでお医者さんを呼んで来ますが、集まった4人のお医者さんは患者の魔法使いを横目に、かわるがわる自分の話を語り始め……?
この表題作の他には、『郵便屋さんの話』や『カッパの話』、『小鳥と天使のたまごの話』など、8作品を収録しています。これらは全て、現実世界と非現実世界が混じりあう、予想もつかない展開の珠玉の童話ばかりです。
作者のカレル・チャペックは、チェコ語の「robota」という「労働」を意味する語から「ロボット」という単語をつくり出したことでも知られ、数多くのSFや戯曲などを残し、チェコの文豪として知られています。
訳者は中野好夫という英文学者なので、この作品は、チェコ語から英語に翻訳された作品を、さらに翻訳した「重訳」ということになりますが、心配いりません。地名や人名などはもとのチェコ語版の作品のものに書きあらため、その他の点でもチェコ語版と見比べて、原作に忠実な訳に仕上げたようです。並外れた努力をされています。すごい!
河童がでてくるというのもそうですが、日常生活の中に非現実的な何かを織り交ぜてファンタジー小説を創作していくチャペックの作品は、「ハリー・ポッター」シリーズのようなファンタジーよりも、むしろ日本の昔話や民話に近いものを感じます。どこか皮肉を感じる創作童話は、一読の価値ありです。
小学校中学年~高学年のお子さんへ
『名医ポポタムの話』(ショヴォー氏とルノー君のお話集3)
作者自身もお医者さん! 型破りな短編集
「ポポタム」とは、カバのお医者さん、それも並大抵ではない名医の名前です。
ポポタムの口癖は「患者が死んでからこそが私の出番」。そんなことを言いながら、ポポタムは診察カバンから、自分で発明した糊やポンプなどを出してきて……。こっちを切ってはあっちを貼り付け、ポンプで膨らませると……?
奇想天外な名医ポポタムが世界を股にかけて大活躍する表題作の他、「人食い鬼の話」など型破りな作品3編を収録するシリーズ3作目。
実は、作者のレオポルド・ショヴォー自身もお医者さんなのですが、そうとは思えないほどの独特のブラックジョークが炸裂するシュールな傑作が集まっています(笑)
もしかするとお子さんによっては好みが分かれるかもしれませんが、小学生の頃の私は大好きでした。少なくとも、男の子なら楽しめると思います。
シリーズ1作目の『年をとったワニの話』や、2作目の『子どもを食べる大きな木の話』、4作目『いっすんぼうしの話』、5作目『ふたりはいい勝負』などと合わせて、楽しんでほしい作品たちです。
まとめ~本日のおすすめ本~
- よるのびょういん(谷川俊太郎 作 長野重一 写真 福音館書店)
- 長いお医者さんの話(カレル・チャペック 作 中野好夫 訳 岩波書店)
- 名医ポポタムの話(レオポルド・ショヴォー 作 出口裕弘 訳 福音館書店)
この他にも前の特集記事⇩で紹介した「ドリトル先生」シリーズも、お医者さんの物語として楽しむことができます!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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